北海道議会 第1回定例会
予算特別委員会 第1分科会 保健福祉部所管
2012年3月15日

「国民健康保険等の第三者行為求償事務について」

<道下>
 国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療における、「第三者行為求償事務」について、以下質問して参ります。
(一)第三者行為求償事務について
 私が把握している「第三者行為求償事務」というのは、交通事故など第三者、加害者の不法行為によって生じた保険給付について、保険者、国保の場合は、自治体や広域連合ですけれども、そういったところが立て替えた医療費等を加害者に対して損害賠償請求する事務のことだというふうに私は把握しておりますが、道からもご説明、補足する点がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 第三者行為求償事務についてでございますけれども、公的医療保険などの被保険者が交通事故等の第三者の行為が原因で医療機関を受診した際などに保険者が保険給付を行ったときは、国民健康保険法など関係法令の規定によりまして、保険者は被保険者に代わってその給付額の範囲内で加害者たる第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得することとなってございまして、これを第三者行為求償と称しているものでございます。

<道下>
(二)第三者行為求償事務に係る広報について
 そういった第三者行為求償となる場合はですね、1つに被保険者、つまり被害者ですね、被害者からの届出、もう1つはレセプト点検における発見、それから医療機関等からの通報、そして損害保険会社からの通報・連絡などがなされたときと承知しておりますが、被保険者、被害者や医療機関等への広報は、どのように行われているのか伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 第三者行為求償に関します広報についてでございますが、各保険者では、被保険者証更新時におけますパンフレット配布ですとか市町村広報等への掲載などによりまして、被保険者に対し、第三者行為による傷病である場合の被害届の提出について、周知を図っていると承知しているところでございます。
 また、道におきましては、第三者行為該当傷病の治療の場合に、レセプトの特記欄へその旨記載していただくよう毎年度当初に北海道医師会及び北海道歯科医師会の機関誌への掲載を要請しており、これを通じて医療機関への周知を図っているところでございます。

<道下>
(三)第三者行為求償の対象額について
 医療機関等へは、そうした広報があるというふうに伺っておりましたけれども、被保険者はなかなかパンフレットとかが入っていてもなかなか気づかないことがあると思いますので、この点今後も広報に力を入れていただきたいというふうに思います。
 次に、その第三者行為求償の対象額として把握している保険者負担額を国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療それぞれ伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 第三者行為求償の対象額についてでございますが、北海道国民健康保険団体連合会が把握しております平成22年度の国民健康保険分の保険者負担額は、国保連合会の共同電算処理システムを利用していない旭川市を除きまして、約4億4,076万円と承知しているところでございます。
 また、平成22年度の介護保険分の保険者負担額は、約1,955万円と承知しているところであり、平成22年度の後期高齢者医療分の保険者負担額は、約3億2,543万円と承知しているところでございます。

<道下>
(四)第三者行為求償事務の実績について
 今、この出された例えば国保連合会の4億4,076万円というこの数字この後で出てきますけれども、私の承知しているところでは、道国保連は、21年度よりも前の古い過年度分のデータは保存していないところ、それぞれ市町村が持っていて国保連が持っていないとこういうところも、ちょっと今後の課題になるというふうに質問に出てきますので、ご承知いただきたいと思いますが、それでは、今は第三者行為求償の対象額でしたけれども、その求償の請求した実績について、過去3年分についてですね、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療制度それぞれについて伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 第三者行為求償の実績についてでございますが、国民健康保険では、平成20年度が約4億5,633万円、21年度が約4億7,461万円、22年度が約4億1,223万円をそれぞれ求償しているところでございます。
 また、介護保険では、同様に年度順に申し上げますと約2,507万円、約1,442万円、約1,955万円をそれぞれ求償しているところでございまして、後期高齢者医療では、順に約2,095万円、約2億2,099万円、約3億2,543万円をそれぞれ求償しているところでございます。

<道下>
(五)第三者行為求償事務の実態把握について
 前の質問との差を比較しますと介護保険も後期高齢者医療分のものも差はありません。
 しかし、国保に関しては、私の計算では約3千万円、1年度だけで3千万円の差があるんですね、実際請求すべきものと還ってきているものと、単純計算して、時効の3年間を考えると3倍ですから約9千万円が自治体や広域連合のそれぞれで、3年間9千万円請求しきれていないというものに、単純計算ですけれども出てきます。
 それプラス、まだまだですねこれは、国保連合会が把握していない分があるんじゃないかなと、それぞれの自治体で抱え込んでしまっている分もあるんじゃないかなというふうに考えております。
 平成21年度のとある自治体の、国民健康保険運営協議会での、委員と国保のこれは役場の方々との話ですけれども、第三者行為の求償事務は今まで実施していなかったのかという問い合わせ、質問に事務局の方は、レセプト点検によりピックアップされてくるものもあるが、実際はほとんど手を付けられなかった、保険会社から連絡があった時以外は手が回っていない状況だったということで、非常にこの第三者行為求償事務については、日常の多忙のためにこの第三者行為求償事務になかなか手が回っていないというのが現状ですし、この一自治体だけじゃなくて、ほかにもたくさんそういったところがあるんではないかというふうに考えます。
 そこで伺いますが、本来求償すべき、つまり請求すべき対象額について、道が、道内の157の自治体や広域連合の国民健康保険の団体等を調査し、しっかりと把握すべきではないかと考えます。
 各国民健康保険などが加害者に請求すべき額と実際に請求した額、そして医療費が支払われた実績額などを調査し、より具体的な実態を道が把握すべきだと考えますが、道の認識と今後の取組みについて伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局長】
 第三者行為求償の実態把握についてでございますが、各保険者におきましては、被保険者からの被害届やレセプトの内容点検のほか、国保連合会がレセプトの記載に基づき作成した第三者行為該当者一覧表を活用するなどいたしまして、求償すべき保険者負担額の把握に努めているものと承知しているところでございます。
 この求償事務につきましては、健全な保険財政を運営していく上で、極めて重要なものと考えておりまして、道といたしましても、道内の実態を把握すべく、保険者が把握している求償すべき額、それに対する請求額及び収納額、更には、保険者が抱える課題や改善事例などにつきまして、調査を行ってまいりたいと考えております。

<道下>
 私が道からお聴きしたところによると、国保運営を支援する道がそうした請求額、また実態、その実績額等をこれまで調査してこなかったというふうに伺いました。これはびっくりだと思うんですよ、また保険者が抱える課題や改善事例などをですね、いろいろ調査して、そしてほかの自治体等に、本当はそういった情報共有をしていくべき課題だと思うんですよ。
 これをこれまでやっていなかったということにびっくりするとともに、今回それをしっかり調査されるということは評価したいと思います。その調査の中で是非ともですね、このレセプトの各自治体の国保が保存する文書の保存年数ですね、求償行為については、時効が3年間ですけれども、レセプトをどれくらい保存しているのか、一緒に調査していただきたいと指摘をさせていただきたいと思います。

<道下>
(六)求償事務担当者の資質向上について
 次に、求償事務を行う場合、国保担当の職員の交渉相手は自動車保険会社などの損害保険会社でありまして、非常に専門家であります。プロです。過失割合などの交渉は経験や交渉技術が必要と考えます。まだまだ症状が固定していないにもかかわらず、加害者若しくは損害保険会社の担当者から一方的に症状固定、治療の打ち切り、示談を迫られる場合も多くあると伺っております。
 どのようにこれまで、国保担当の職員の方々の求償事務の技術、また資質の向上を図ってきているのか、またこれからどのように図ろうとしているのか伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 求償事務担当者の資質向上についてでございますけれども、この求償事務は、第三者の行為により発生した保険者負担額を被害者に代わって、保険者が加害者に対して損害賠償の請求を行うものでございまして、職員には自賠責制度や損害賠償額の算定の方法など一定程度の専門的知識が求められているところでございます。
 このため、道では、本庁の医療給付専門指導員が保険者に出向き、担当職員に対しまして直接的に技術的助言を行うほか、北海道国民健康保険団体連合会が毎年実施しております「第三者行為求償事務講習会」への出席を働きかけるなどして、求償事務担当職員の資質向上に努めているところでございます。

<道下>
 これまで、そのように資質向上に努めてこられているということでございますが、国保の担当職員も公務員でありまして、人事異動があります。数年してまた別の担当部署に異動してしまう、また新しい方が入ってくるとなったら、積み重ねた経験が無駄になってしまうんじゃないかなということも考えられますので、そこら辺の改善を今後取り組んでいただければというふうに思います。

<道下>
(七)事務の委託等について
 次に、求償事務において、その必要な書類が何種類もあります、それぞれの自治体や広域連合の国保担当職員の数の少なさから考えてみますと、本来業務の傍ら求償事務を行うのは非常に大変であると、困難を極めるものだと推測されます。
 その求償事務に関する必要な提出書類は、委任状、事故発生状況報告書、第三者の行為による被害届、交通事故証明書、診療報酬明細書等の写し、必要な場合は人身事故証明書入手不能理由書だとか念書だとかが必要であります。
 本当に多忙を極める中で、そうした書類の収集などの委託はできないものか、何か先進事例はあるのか伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 求償事務の委託等についてでございますが、この求償事務は、保険者自らが行うことを基本としておりますが、国民健康保険法等関係法令の規定により、保険者は、損害賠償の請求権に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を国保連合会に委託することができることとされております。
 本道では、国保連合会の取りまとめによりますと、平成22年度におきましては、求償実績のあった104保険者のうち、約6割の62保険者が、委託しているところでございます。
 なお、一部の保険者におきましては、国保連合会に委託する際に提出する関係書類の作成等の業務を行政書士等の民間業者に委託している事例もあると承知しているところでございます。

<道下>
(八)効率的な事務の執行について
 私の把握しているところでは、石狩管内の北広島市やこれから石狩市も行政書士法人に委託を考えているということでございます。
 今の話はですね、書類を収集することは外部委託はできるということでございますけれども、第三者行為求償の請求と実績を高めるためにもですね、求償事務そのものを、行政書士法人などや事務代行業者などに外部委託し、加害者もしくは損保会社から本来支払われるべき医療費をしっかりと効率的に回収すべきだと思うんですけども、そうした方法はできないものか、どうか伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 外部委託などについてでございますが、先ほどもご説明したとおり、損害賠償の請求権に係る損害賠償金の徴収又は収納事務につきましては、保険者自らが行うか、国保連合会に委託して行うかの2通りとなっているところであり、関係法令上、他の民間業者等への委託はできないところでございます。
 なお、加害者に対しまして、損害賠償を請求するために必要となる関係書類の作成等の準備事務につきましては、関係法令に抵触しないことから行政書士等民間業者への委託がなされているところでございます。

<道下>
 いま関係法令上、難しいということでございますけれども、自治体や広域連合などと協議してですね、ぜひ委託できるような関係法令に改正されるように、国に要請すべきだというふうに指摘をさせていただきたいと思います。

<道下>
(九)国保システムの統合に伴う効果について
 次に国保のシステムについてですけれども、昨年5月から国民健康保険の事務処理システムが統合されたというふうに承知しております。これにより、求償事務に関して、どのような効果が得られるのか、伺いたいと思います。

(答弁)
【健康安全局参事】
 国保システムの統合に伴う効果についてでございますが、国保連合会の電算処理が全国共通の国保総合システムに移行したことに伴い、昨年5月から各保険者におきましては、国保連合会のコンピュータにアクセスして、国保連合会が保存する過去のデータを含め「第三者行為該当者一覧表」の内容をいつでも確認・点検することが可能になったところでございます。
 このため、求償事務の対象となる保険給付事案の把握漏れが解消されるなど適正で円滑な事務処理につながるものと期待されるところでございます。

<道下>
 システムが統合されることによって、把握漏れが解消されるということで期待されるものでありますけれども、第三者行為求償事務に関して、例えば、北海道後期高齢者医療広域連合では、実は平成21年度からその第三者行為求償事務を専門として、専任してやる専門員を配置したということで、先ほどの答弁のあったとおり、請求すべき額と実績額が同額になっているということであります。ここは、全道全ての後期高齢者医療、これ一本化しているから、こういうことができるわけであって、それぞれの157の自治体や広域連合では、本当に人数が少ない中で、また、予算が足りない、本当に少ない中で、新たな専門員を設けることは難しいというふうに考えます。
 であるからこそ、国保連合会や道が、しっかりとそれぞれの国保を支援して行かなければならないというふうに、私は考えているところではございますが、

<道下>
(十)求償事務に対する道の考え方について
 こうしたですね、今回私が質問に取り上げた求償事務について、しっかりと実施されなければ、加害者、損害保険会社もありますが、それらが負担すべきものが、保険料や税によって負担されることになる、穴埋めされることになる訳です。国保などの財源が赤字になれば、不足分は税金によって補われることになります。国民健康保険等の適正で安定した運営のためにも、第三者行為求償事務はしっかりと実施されなければならないと考えます。
 道内の国民健康保険等の運営を把握、支援している道として、今後どのような考えで関連する諸施策について取り組んでいこうとお考えなのか、最後にお伺いしたいと思います。

【保健福祉部長】
 今後の取組みについてでございますが、委員ご指摘のとおり、求償事務が適切に行われない場合には、本来保険者が負担すべきではない保険給付を、結果として、加入者の保険料や公費などで補てんすることにもなり、この事務の適正化は、健全な保険財政を維持します上で、重要なものと考えているところでございます。
 このため、道といたしましては、これまでも保険者に対し、各種会議や道の医療給付専門指導員によります技術的助言のほか、委託制度の活用や第三者行為求償事務講習会への職員の出席要請などに努めてきたところでございますが、今後は、こうした取組みに加えまして、先ほど申し上げましたように課題等の実態調査を実施しますとともに外部委託などの改善事例につきまして紹介するなどいたしまして、求償事務が適切に行われますよう、保険者を支援してまいりたいと考えてございます。

<道下>
 最後に指摘をさせていただきます。
 道からいつも毎年出している資料でも、国民健康保険制度の運営のために、医療費適正化対策をしっかりやってほしいと、それぞれに話をしています。
その中でレセプト点検体制の充実強化、その中に第三者行為求償事務専門員の雇用による求償事務の充実の強化などがありますが、先ほども申し上げたとおり、市町村における国保会計の収支は非常に極めて厳しい、滞納を回収するっていうのも非常に重要でありますが、そうした中で、この第三者行為求償事務、道の支援でそれぞれの国保がしっかりと取り組めるように力強く支援していただきたいというふうに指摘させていただきまして、私の質問を終わります。