今日は12日の一般質問その2「幌延深地層研究計画について」です。

 幌延深地層研究計画というのは、約30年前に国(動力炉・核燃料開発事業団:動燃)が高レベル放射性廃棄物貯蔵施設を北海道の最北端、稚内市より少し南側に位置する幌延町に建設しようとしたことが発端で、「幌延問題」といわれています。

 当時の横路孝弘北海道知事が先頭に立って北海道全体で反対し、結局は「放射性廃棄物は持ち込まない」などの協定書が国(動燃)と道と幌延町で締結されました。
 そして2000年に動燃から改組した核燃料サイクル開発機構が核抜きの地層処分研究施設として幌延深地層研究センターを設置し、現在は放射性廃棄物を処理する技術を調査研究するための研究施設の工事および調査研究をしている段階です。
 このように、今のところは「幌延問題」は一応の終止符を打ったことになっています。

 私がこの問題を取り上げたのは、昨年11月15日に民主党北海道の幌延深地層研究センター現地調査団の一員として現地を視察し、そこで、地下約500メートルまで掘り進めている中で、大量の掘削土が発生し、そこから有害な土壌や排水が付近の河川に流れ込んでいるという意見や調査結果を地域住民の監視団体から受けたからです。

 そこで私は一般質問において、道に対して、しっかりと道が独自に自治体や学識経験者、そして地域住民も参加した調査監視委員会を設置し、その調査結果を広く公表し、安全確認すべき、などの観点から質問いたしました。

 なお、今回も質問と答弁の流れをわかりやすくするために一問一答形式に変換していますのでご了承ください。

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2008年 第1回定例会 一般質問
<幌延深地層研究計画について> 

民主党・道民連合 道下 大樹

【1問目の質問】
 次に、幌延深地層研究計画について質問いたします。
 幌延での深地層研究については、道は研究を受け入れる条件に「放射性核廃棄物の持ち込みは認めない」として、幌延町に対しては「協定書」、そして道全体には条例を制定して、その条件を担保していると私は認識しています。
 しかし昨年11月、国は高レベル放射性廃棄物の処分地選定について、これまでの公募方式に加えて、応募がなくても国が市町村に調査を申し入れる方式を追加しました。
 経済産業省は道内自治体も「申し入れの対象から排除しない」というような発言をしていると聞いております。
 道条例や協定書を無視して市町村に対して調査が行われることがあってはならないと思います。知事の見解を伺います。

【1問目の答弁:知事】
 高レベル放射性廃棄物の処分地選定についてでありますが、国におきましては、昨年11月に取りまとめた「最終処分事業を推進するための取組の強化策に係る中間報告」において、「文献調査を開始するに当たり、国が前面に立った取組が必要であるとの指摘を踏まえ、公募による方法に加え、場合によっては、市町村に対し国が文献調査の実施の申し入れを行うことも可能にし、その場合、市町村長は、国からの申し入れに対し、受諾の可否を表明することとなる。」とされているところ。
 北海道におきましては、平成12年に制定された「現時点では、その処分方法が十分確立されておらず」、「こうした状況の下では、特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたい」とする「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」がありますことから、市町村においては、この条例の趣旨を十分理解し適切に対処すべきであると考えている。

【2問目の質問:道下】
 次に、昨年11月に政府の地震調査委員会が道北のサロベツ断層帯でマグニチュード7.6程度の大地震が30年以内に4%以下の確率で発生するとの長期評価を公表しました。この4%というのは「確率が高いグループ」に分類されると伺っております。
 そうした大地震の発生の確率が非常に高い断層のごく近いところで、幌延深地層研究センターが現在掘削工事および調査研究を行い、今後も20~30年間は調査研究が続くことについて、施設やそこで働く人々、地元への影響など、知事はどのようにお考えなのか伺います。

【2問目の答弁:経済部長】
 幌延深地層研究センターの耐震性等についてでありますが、日本原子力研究開発機構では、国によるサロベツ断層帯に係る長期評価を受けて、幌延深地層研究センターの地下施設への影響について検討を行った結果、サロベツ断層帯による地震時発生応力度は、地下施設設計時の地震時許容応力度以内であり、研究施設として十分な耐震安全性を有していることを昨年12月に公表したところ。
 道といたしましては、研究計画を進めるに当たっては、耐震性はもとより、安全性に配慮した研究計画の推進が必要であると考えており、引き続き、安全性の確保について、必要に応じて原子力機構及び国に対して要請してまいりたい。

【3問目の①の質問:道下】
 次に、幌延深地層研究センターにおける水質調査について伺います。
 幌延深地層研究センターは、地下施設工事に伴い発生する排水について、排水処理を行った後に天塩川に放流し、定期的に水質調査を行い、道に報告したりホームページ等で公表しています。
 昨年11月には民主党北海道幌延深地層研究所視察調査団を結成し、私もその一員として現地視察させていただき、地域住民や団体と意見交換いたしました。住民の方々からは、センターの水質調査には不備な点や公表データの間違いが多々あるという指摘がありました。
 私どもが調査した時は地下120mと70mまで掘り進んでいましたが、現在ではさらに深く進んでいると思います。最終的には500mまで掘るということで、今後どのような有害物質が出てくるかわかりません。道民の生命や生活、環境保全の責任を有する道としてしっかりと対応しなければならないと考えます。
 岐阜県には幌延と同じような施設である瑞浪超深地層研究所があり、そこでは研究所だけではなく、岐阜県、そして瑞浪市でも独自に水質調査を実施し、住民に対して公表し、安全確認を行っていると聞いております。
 原子力研究機関や電力会社による情報隠し、データ改ざんが道内も含めて相次いで起きました。幌延深地層研究センターが公表するデータの信ぴょう性を、道はどのように確認しているのか伺うとともに、道としても、研究センターの調査結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、岐阜県のように行政による水質調査を実施し、住民に結果を公表するのが行政としての重要な役割ではないかと考えます。知事の見解を伺います。

【3問目の①の答弁:経済部長】
 幌延深地層研究センターにおける水質調査についてでありますが、センターにおいては、地下施設工事に伴い、天塩川への排水を平成18年12月から始めたところであり、水質の状況を自主測定により水質汚濁防止法の排水基準内であることを確認するとともに、自主測定の結果をホームページなどで公表するなど、「幌延町における深地層の研究に関する協定」に沿って環境の保全に努めているところ。
 道におきましても、水質汚濁防止法に基づき、平成19年においては、3月及び6月に立入検査により、施設の管理状況、自主測定の実施状況を確認しているほか、水質調査により、排水基準内であることを確認し、その結果を事業者に通知しているところ。
 今後ともこの協定が遵守され、積極的な情報公開や環境保全が図られるよう適切に対応してまいる考え。

【3問目の①の再質問:道下】
 幌延深地層研究センターの水質調査について再質問いたします。
 水質汚濁防止法による行政検査では、異常がなければ公表しないということになっていますが、そうした道の消極的な対応に、地域住民は大変不満を持っています。
 岐阜県と瑞浪市は日本原子力研究開発機構と環境保全協定書を結び、行政検査として平成18年度から年4回、瑞浪超深地層研究所の水質調査を実施し、結果は基準値内であってもホームページなどで公表しています。
 住民の不安を解消するためにも、道は日本原子力研究開発機構と環境保全協定を締結し、その上で、独自に水質調査を行い、その結果をホームページ等で公表すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

【3問目の①の再答弁:知事】
 水質調査についてでありますが、幌延深地層研究センターにおいては、道と幌延町との協定に沿って天塩川への排水に係る水質について、定期的に自主測定を行い、その結果をホームページなどにより、住民などに公表しているところ。
 道においても、水質汚濁防止法に基づき水質検査を行い、法の定める排水基準内であることを確認し、その結果を事業者に通知しているところ。
 今後とも、協定や関係法令に基づき適切に対応するとともに、センターに対して、住民などへの積極的な情報公開に努めるよう要請してまいる考え。

【3問目の②の質問:道下】
 次に、深地層研究センターは敷地内や掘削土(ズリ)置き場、また天塩川などで水質調査していますが、敷地内の2ヶ所の雨水調整池においては水質調査を行っていないと聞いております。
 この雨水調整池の水は、近くの清水川に放流されていますが、そのうち1ヶ所には、掘削現場付近や掘削土(ズリ)仮置き場などからの雨水や雪解け水が流れ込んでいることが考えられます。つまり排水処理されていない水がそのまま川に流され、ラムサール条約に登録されているサロベツ湿原を通り、河口付近で天塩川に合流し、ホタテやシジミなどの漁業が盛んな日本海に注がれている可能性があります。
 そうした点から考えて、道は深地層研究センター側に対して、それら雨水調整池の水質調査も実施するよう要請すべきと考えますが、知事はどのようにお考えか伺います。

【3問目の②の答弁:経済部長】
 幌延深地層研究センターの敷地内の雨水調整池についてでありますが、センターにおいては、2ヶ所の雨水調整池を設け、敷地内の雨水を一時的に貯水し、泥などを沈降させた後、河川に放流して、定期的に河川の水質調査を実施し、周辺の水質と変化のないことを確認しているところ。
 なお、立坑の地下水や掘削土置き場からの浸出水は、排水処理施設で適切に処理され、雨水調整池に流入しない構造となっているところ。
 いずれにいたしましても、道といたしましては、センターが「幌延町における深地層の研究に関する協定」を遵守し、今後とも、雨水調整池の水質が適正に維持されるよう努めるものと考えますが、必要に応じて協定に基づき適切な対応をしてまいる考え。

【3問目の②の再質問:道下】
 また、岐阜県と関係市町村は「超深地層研究所安全確認委員会」を設置し、自治体関係者、議員、学識経験者、そして住民も加わり、視察や必要な調査を実施できると承知しています。
 道に対してはこれまでも、協定書第14条に沿って設置されている確認会議の実行能力の拡充が、住民や市民団体などから求められていると承知しています。
 住民も参加した安全確認委員会を新たに設置し、独自調査や情報公開、環境保全の措置、風評被害の未然防止の措置などの活動を展開すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

【3問目の②の再答弁:知事】
 環境への安全確認などについてでありますが、道、幌延町及び幌延深地層研究センターは、幌延町における深地層研究に関して、風評被害の未然防止、環境保全のための措置や積極的な情報公開などについて協定を締結しているところ。
 道やセンターでは、毎年度、環境対策などを盛り込んだ事業計画の説明を幌延町や周辺自治体で行い、住民も含めた関係者との意見交換や情報収集に努めているところであり、道といたしましては、今後ともセンターなどと連携し、協定に沿って地域住民に対して積極的な情報提供を図るなどして、環境の保全に努めてまいる考え。

【全体における指摘:道下】
 幌延深地層研究計画について指摘いたします。
 道は、今の季節のような雪解けの時期における実態調査を行ったことはあるのでしょうか。また大雨のときに現地調査したことはあるのでしょうか。地域住民による監視団は、そうしたときも調査を実施し、掘削土置き場の山から泥水が道路や沢に流れている場面を撮影し、幌延深地層研究センターの環境保全の取り組みのずさんさを再三道やセンターに指摘してきたと聞いております。それに対して道はどのような対応をしてきたのでしょうか。
 季節的および突発的な状況の変化にスピーディーかつ柔軟に対応でき、住民参加による住民に開かれた形での調査監視体制を構築することが一番重要なのではないでしょうか。
 この幌延深地層研究計画は、これから30年あるいはそれ以上続くかもしれません。続く限り、地域住民は不安と不満を抱えながらこの計画と共に暮らしていかなければなりません。
 そうした観点から、道は関係自治体ならびに日本原子力研究開発機構と「環境保全協定書」を新たに結び、また道は関係自治体と共に「安全確認委員会」を設置し、地域住民や道民の不安を解消するための調査等の活動に取り組むべきであると知事に強く指摘して、質問を終わります。